白ワインの瓶内やコルクの裏に結晶が!飲んでも大丈夫?
ボトルで買った白ワイン。
「飲もうと思ったら、瓶の底にガラスのような結晶が!」や
「開けたら、コルクの裏にキラキラした結晶が!」
こんな経験をしたことはありませんか?
そうなると
「この結晶は何なんだろう?」とか
「この白ワインは飲んで大丈夫なのかな?」とか、
って気になりますよね。
このキラキラとした結晶は「酒石」と呼ばれており、まったく無害なものです。それどころか、そのワインが上質な証ともされています。
今回は、この酒石についてお話してまいりましょう。 もしあなたが、こんな結晶は見たことがないという場合でも、ワインを飲んでいればいつか必ず出会いますので、その時のためにぜひ最後まで読んでください。慌てずに済みますよ。
白ワインに現れる結晶「酒石」とは?
白ワインのボトル内やコルクの裏でキラキラしている結晶。一般的には「酒石」と呼ばれていますが、正式には「酒石酸水素カリウム」や「酒石酸カルシウム」という名の物質です。
もともとワイン中に溶け込んでいた成分が結合して、結晶となったものです。
結晶の原料は何?
結晶を作る成分の一つは酒石酸です。
ブドウにはリンゴ酸やクエン酸など多くの種類の酸が含まれますが、その中の一つ。ただし、リンゴ酸などは他の果物にも含まれますが、酒石酸はブドウだけに含まれる酸です。味わいに大きく影響する酸として、ワイン作りでは重要視されています。
そして、この酒石酸とワイン中に含まれるミネラル成分の「カリウム」や「カルシウム」が結合することで結晶ができます。
これが酒石です。
結晶はキラキラして美しく、また、酸やミネラルを多く含むワインは上質なものが多いとされているので、酒石は「ワインのダイヤモンド」や「ワインの宝石」などと呼ばれたりもします。
どんなときに結晶化するの?
酒石の結晶ができやすい条件として、ワインが酒石酸やミネラルを多く含んでいることは述べたとおりですが、それ以外にも結晶化しやすい条件が3つあります。
・温度が低い
・保存が長い
・アルコール度数が高い
温度が低い
ワインの温度が低くなるにつれて、結晶ができやすくなります。ですから、酒石は冷蔵庫に入れている白ワインに多く見られます。
保存が長い
そこまで低い温度でなくとも、酒石の生成はゆっくりと進んでいきます。ですから、古いワインほど酒石が見つかりやすいといえるでしょう。
アルコール度数が高い
酒石の成分はアルコールに溶けにくい性質を持っています。ですから、アルコール度数が高くてしっかりしたワインほど、酒石のできやすいワインといえます。
いずれの場合も、酒石は少しずつ数が増え、ゆっくりと結晶が大きくなっていきますので、買ったときにはなかったはずなのに気づくと結晶が多くできていたということになります。
すべての白ワインに酒石は出るの?
しかし、すべての白ワインに酒石が出るわけではありません。もともと酒石酸とミネラルをあまり含んでいないワインであれば、結晶が作られないからです。
また、酒石があることで消費者からクレームが来ることが考えられますので、それを避けたい生産者が製造中に前もって除去することもあります。
このように酒石を取り除いたものであれば、保存期間中に酒石が結晶化することはほぼありません。
ちなみに、酒石を取り除く最もシンプルなやり方が「冷却法」です。これは、ワインの温度が低いと酒石が発生しやすいという性質を利用したもので、ワインを-5℃くらいに冷やして結晶化させておいて取り除きます。他にも「コンタクト法」や「電気透析法」などがあります。
しかし注意したいのは、酒石を取り除くことで、同時にワインのおいしさとなる成分も除去してしまうおそれがある点です。酒石酸もミネラルもワインにとっては味を左右する成分であり、これらを除去するとワインのおいしさを低下させることにつながるという考えから、この作業を行わないワイナリーもあります。
また、おいしさの点だけでなく酸を取り除くことで、ワインの酸度が低下してワインが劣化しやすくなる可能性も指摘されています。
つまり、白ワインのボトルの中に酒石の結晶を見つけたら、おいしいワインだという期待が持てるということです。
酒石が出るのは白ワインだけ?
ここまでこのお話は、酒石の結晶は白ワインにできるという前提で進めてきました。しかし、あなたはもうお気づきでしょう。酒石ができるのは、白ワインだけではないのではないかと……
そのとおりです。酒石ができるのは白ワインだけではありません。赤ワインでもできます。さきほど酒石ができる条件を挙げましたが、これらは赤ワインでも満たしています。
ただし、酒石を目にするのは、白ワインのほうが多いのもまた事実です。
理由は、赤ワインでは酒石が色素によって赤くなってしまい、白ワインの場合の透明な結晶よりも目立ちにくくなってしまうことが挙げられます。
他にも、酒石と澱(オリ)が一体となってしまって、結晶として認識しづらいため、酒石に気づきにくいということもあるでしょう。
加えて、赤ワインは白ワインほど温度を低くしないので、酒石が発生しにくくなっています。
酒石の結晶があるワインの扱い方
白ワインだけでなく、赤ワインにも酒石は発生するとわかっていただいたところで、いざワインの中に結晶を見つけたら、どうしたらいいのでしょうか。
酒石があるワインは飲めるの?結晶は口にして大丈夫?
酒石は、もともとワイン中にある有機酸の一種である酒石酸がカリウムなどと結びついたものなので、まったくの無害です。ですから、酒石があるワインを飲んでも害はありませんし、結晶自体が口に入ったとしても健康上の心配はありません。
むしろ、酒石があるワインは酸やミネラルを豊富に含む上質なものといえます。同じワインであってもブドウの出来が良かった年のほうが酒石は出やすいとされていますので、酒石があること自体は喜ぶべきことでしょう。
しかし、酒石の結晶が口に入るとザラザラした感触があり酸味や苦味を感じることもあるので、ワインを楽しむのに邪魔に感じるはずです。ですから、結晶はなるべく口には入れないほうがよいでしょう。
結晶に注意して、ワインをグラスに注ぎましょう
口に入っても無害ではありますが、ワインを味わう際には邪魔となってしまう酒石の結晶ですから、できればグラスには入らないようにしたいものです。
そこでやっていただくとよいのが、以下のことです。
・ボトルを立てておく
・ゆっくりと注ぐ
・デキャンティングをする
ボトルを立てておく
少なくとも飲む1日前か2日前には瓶を立てて置き、結晶を瓶底に沈めるようにしましょう。それからラベルを上にして瓶を斜めか横にすると、結晶は瓶底の一箇所に集まります。
ゆっくりと注ぐ
この結晶の塊をなるべく動かさないように、静かにグラスにワインを注いでください。このとき、瓶の底を持って瓶を傾けると、瓶底の結晶をほぼ動かすことなく注ぐことができます。
デキャンティングをする
注ぐ度に酒石を気にするのが面倒な場合は、前もってデキャンタなどの別の容器にワインをすべて移してしまうとよいでしょう。この作業を「デキャンティング(フランス語では「デキャンタージュ」)」といいますが、これをすると後の面倒がなくなるだけでなく、ワインが空気と触れることで味が良くなることもありますので、ぜひやってみてください。
まとめ
本記事は白ワインなどの瓶の底やコルクの裏などでキラキラ光っている結晶の「酒石」についてお話ししてまいりました。
といっても、酒石は白ワインだけでなく赤ワインにも発生するものです。有害なものではなく、むしろ味わい豊かなワインの証明といえるもので、低温下での保存や長期保管中に徐々に作り出されていきます。
しかし、この酒石自体はおいしいものではなく、また口に入るとザラザラとし、酸味や苦味で不快に感じることもあるので、結晶がグラスに入らないように気をつけてワインを注ぐのがよいでしょう。 酒石のあるワインに出会ったら、じっくりと味わう価値があるワインだということを意識しながら、存分にそのおいしさに浸ってみてはいかがでしょうか。
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