未開封や開封後のワインの保管方法を6分で理解|自宅のワインをおいしく保存
ワインショップで見つけてつい買ったものや、もらったものなど、いずれ飲むまで取っておこうと思っているワインが、あなたのお家にもきっとあるでしょう。
また、ボトルを開けてしまったけど、飲み残したので、しばらく保存しておきたいなんてこともワイン好きならよくあるはず。
しかし、ワインはウイスキーなどのアルコール度数が高い酒類と比べると保管に注意が必要な飲み物です。
保管方法を間違えてしまうと、せっかくのワインが台無しになることもしばしば。 そこで本記事では、ワインのおいしさをキープする保管方法について、未開封の場合と開封後の場合に分けて解説してまいります。
ワインの保管方法を考える前に知っておきたいこと
ワインの保管方法をお伝えする上で先に知っておいていただきたいのが、ワインに悪影響を与える条件です。これらを知っておけば大きなミスをすることは避けられ、ワインをムダにすることも減りますので、チェックしておいてください。
また、ワインセラーが理想の環境であることも改めてお伝えさせていただきます。ワインセラーをお持ちでなくてワインを長く保管しようとお考えならば、ぜひ購入もご検討ください。
ワインの質に影響を与える5条件
ワインの保存とは劣化との戦いです。
繊細な酒類であるワインは様々な条件により変質してしまうのですが、未開封のワインを保管する際は以下の5つに気をつけるとよいでしょう。一つずつ見てまいります。
温度
ワインの質に最も影響を与えるのが温度だといわれています。
ただし、温度といっても気をつけるポイントは以下の2つに分かれます。
・温度の高さ
・温度変化
温度の高さ
ワインを保管する適温は、10~15℃くらいです。
これより高いと、ワインが化学的に活性化し、酸化が進みすぎて、質が劣化しやすくなります。酸化が進むとシェリー酒や醤油のような匂いがして、本来のおいしさを味わえなくなってしまいます。
逆に低すぎても劣化します。これは、低温下ではワイン中の酒石酸が結晶化しやすく、その際にミネラル分と結合するため、ワインから味わいが抜けていくからです。とはいえ、高温時に起きる劣化と比べるとわずかであるため、数か月単位であればそこまで気にする必要はないでしょう。
温度変化
温度変化についても注意しなければなりません。
というのも、温度が変わるとボトル内のワインと空気は膨張あるいは収縮をします。
コルク栓には通気性がありますので、膨張・収縮を繰り返すと、ボトル内の空気は多く入れ替わります。すると、ワインの酸化が進み劣化してしまうのです。
ですから、適温の範囲内であっても温度変化は極力抑えるようにしてください。
ちなみに「ワインが噴く」という状態は、温度変化による膨張時にワインが瓶口から漏れ出すことを意味します。この場合、必ずではないのですが、高温による劣化が考えられますので、購入は避けたほうが無難です。
光
温度と並んで、ワインに大きな悪影響を与えるのが光です。
紫外線には物を変質させる働きがありますので、人間が紫外線によりお肌のトラブルを起こすように、ワインも紫外線によって状態が劣化します。直射日光は当然ながら、蛍光灯の光にも紫外線が含まれますので、蛍光灯の光も極力避けてください。
もし、保管場所に光が入り込むのであれば、ワインのボトルを光を通しにくいもので包むなどして、ワインに光を当てないようにしましょう。
振動
ワインを買ってきた後はしばらく寝かせたほうがよい、という話をあなたは聞いたことがあるでしょう。これは、振動がワインの味を変化させるからです。そして、しばらく静置しておくと元に戻ります。ただし、振動が長期間加わるともとに戻らないともいわれています。
ですから、ワインの保管中は極力振動させないようにするべきです。
匂い
見落とされがちですが、ワインを保管する際には匂いにも気をつけなければなりません。
ワインのボトルは、コルクを通して空気が出入りしていることは前述しました。この空気に匂いがあるとワインに匂いが移ってしまいます。ですから、匂いの強いものが周りにない環境で保管するようにしましょう。
湿度
湿度自体が直接的にワインの味を変えるわけではありません。しかし、乾燥した場所に保管されたワインはコルク栓が縮んで隙間が空くので、そこから空気が出入りして酸化が進むといわれています。
ということは、コルクを乾燥させなければ問題ありませんので、そこだけ注意をしてください。コルクに適した湿度は70%前後とされています。
理想の条件がそろっているのがワインセラー
適温適湿が保たれていて、光が入り込まず、振動や匂いの影響もない、これらの環境が整っているのがワインセラーです。たしかに、製品によっては一部の条件を満たしていないようなものもありますが、工夫次第でカバーできる範囲内です。
この後お伝えするとおり、ワインセラーがなくてもある程度の期間、味に悪影響を与えない保管方法もあります。
しかし、長期の保存、健全な熟成を目的とする保存をするのであれば、ワインセラーに入れるのが理想です。
しばらく熟成させて、魅力的に変身した味を楽しみたいというのであれば、ワインセラーで寝かせることをおすすめします。
未開封ワインの保管方法
未開封のワインを保存するのであれば、ワインセラーに入れるのがベストであることはお伝えしたとおりです。しかし、ワインセラーがない場合もあるでしょう。また、ワインが増えすぎてしまってワインセラーに入り切らないという場合もあるかもしれません。
そこで、ワインセラーに入れなくても劣化しにくい、未開封ワインの保管方法についてお伝えします。
ただし、日本の一般的な家屋で健全な熟成を長期に渡って行なうことは難しいので、長期熟成を目的とする場合は先述のとおりワインセラーを利用してください。
夏場の保管
夏場にワインを保管するのに、おすすめしたいのが冷蔵庫の野菜室です。
ワインセラーに入れずワインを保管する場合、よくいわれるのがお家の涼しい場所に置くと良いということです。北側にあるお部屋の押入れとか、床下収納とかです。
しかし、いくら涼しいとはいえ、クーラーを入れっぱなしにするのでもなければ、真夏にはこれらの場所でも30℃を超えるでしょう。これでは、ワインの劣化が進んでしまいます。
対して、冷蔵庫は温度も湿度も低すぎるのでダメだといわれます。
しかし、野菜室なら、温度も湿度も冷蔵室に比べてやや高くなっていますので、ワインにとってそこまで悪い環境ではありません。
それに、すでにお伝えしたとおり、高温時に比べると低温時の劣化はわずかなものです。スペースがあるのであれば、迷わず野菜室で保管しましょう。
このとき、瓶口の部分をすっぽりとラップでくるんで、輪ゴムで止めておくとよいでしょう。コルクの乾燥が防げ、匂いの影響も受けなくなります。
ただし、引き出し式の野菜室の場合は、澱(オリ)があるワインなど一部のワインは入れないようにしてください。というのも、引き出しを出し入れする際にワインも一緒に動いてしまうからです。澱が舞ってしまったり、振動でワインが弱ったりするからです。
その場合には、扉の開け閉めによる温度変化が少なくワインが揺らされない、冷蔵室内の奥のほうに保管しましょう。先述のとおり、数か月程度であれば低温を心配するほどではありません。
夏場以外の保管
室温が10~20℃くらいの季節であれば、室内で保管しても大きな問題はないでしょう。
ただし、この温度域であっても温度変化は避けなければなりませんので、人が生活し冷暖房を頻繁に使用するお部屋には置かないようにしてください。そうなると、先程紹介した北側にあるお部屋や床下収納が最適となるでしょう。
このとき、ワインは立てて保管してください。というのも、温度変化によりワインが膨張した場合、寝かせておくと中のワインがコルクの隙間から漏れ出してしまう心配があるからです。
ワインは寝かせて保管すべきだとよく言われますが、短期間であれば立てておいてもほぼ悪影響はありませんので、安心してください。
開封後のワインの保管方法
次に、飲みきれずに残してしまった、開封後のワインの保管方法について説明します。
ワインは一度開けてしまうと、短期間のうちに飲んでしまわないと本来の味を失ってしまいます。とはいっても、よく言われるように“開けたらその日のうちに飲み切ってしまわなければならない”ということはありません。むしろ、2日目や3日目のほうが香りが開いておいしくなるワインというのもあるくらいです。
ではどれくらいなら大丈夫かというと、ワインの性質や保管環境で変わるので一概には言えません。ただ、アルコール度数が高いもの、渋みが強いもの、甘さが多いものは劣化の進行が遅いとされています。後ほど、保管の仕方別にどれくらい品質が保てるか目安をお伝えしますので、そこにアルコール・渋さ・甘さの程度を加味して保管期間を決めてください。
きちんと栓をする
開封したワインを保存するとき、まずやらなければならないのが、きちんと栓をすることです。
先程、ワインの保管に影響する5条件を挙げましたが、開封した後はこれらに加えて空気が大きく影響します。特に大きいのは酸素の影響です。新たな酸素がボトル内に入ってこないよう、必ず栓をしましょう。
栓をする目的
栓をする目的は、空気の入れ替わりによって新たな酸素がワインに触れないようにするためだとお伝えしました。もちろん、ボトルが倒れたときにこぼれないようにとのもあります。さらに、もう一つあります。
それは、菌の侵入を防ぐことです。私たちが普段生活している空間では、空気中に様々な雑菌が浮遊しています。栓をせず放置したワインボトル内には、これらの菌が入り込みワイン中に落下します。そして、この菌によっても、ワインは劣化してしまうのです。
酸素と菌からワインを守るため、栓をしなければなりません。
栓の種類
ワインの栓の仕方には様々なものがあります。中には栓とは呼べないようなものもありますが、ワインの劣化を防ぐという点では同列に述べるべきものだといえますので、こちらで紹介します。
保管方法による保管期限の目安
保管方法 | 保管期限 |
コルク(スクリューキャップ) | 2~3日 |
バキュバン | 4~5日 |
アンチ・オックス | 7日前後 |
ガス注入 | 10日前後 |
コルク(スクリューキャップ)
もともと、そのワインにしてあった栓を使う方法です。スクリューキャップの場合は、ただ閉めるだけなので特に問題はないでしょう。
しかし、コルクの場合はちょっとしたコツがあります。コルクは入っていた状態と上下を逆にして差し込みましょう。
多くのコルクは均等な円筒形ではなく、下になっている側が太くなっていますので、元の向きのまま差し込むのが難しくなっています。ですから、上と下をひっくり返すと差し込みやすくなります。
このときに、コルクのボトルに入る側にラップを被せるとよいです。ラップをすることでコルクの隙間からの空気の出入りを防げますので、わずかですが劣化を遅らせることが可能です。
この方法でおいしく飲めるのは2、3日程度といわれています。
バキュバン
ボトルの中の空気を吸い出して、中を真空に近づける器具です。ボトル内の酸素が少なくなりますので、酸化が進みにくくなります。
バキュバンは、ボトル内の空気を外に出せるが、外から中には空気を入れられない構造になっている「キャップ」と、ボトル内の空気を外に吸い出すための「ポンプ」の2つから構成されています。
発売から30年近くになり、多くの飲食店でも利用されているので信頼性の高い器具です。
およそ4~5日程度はワインの品質を保持できるといわれています。
ただし、スパークリングワインには使用しないよう気をつけてください。空気を吸い出すということは、スパークリングワイン中の炭酸ガスが抜けていくことになります。スパークリングワインには専用のストッパーがありますので、それを使用してください。
アンチ・オックス
瓶口に被せるだけ、バキュバンのように空気を吸い出す必要がないのがこのアンチ・オックスです。
なぜ被せるだけで酸化が防げるのかというと、キャップの内側にある酸化防止フィルターが酸素を吸着し、ワインと酸素が接触することがなくなるからです。
利用するのに手間がかからず、かつ人質保持効果も高いということで、近年人気が高まっています。
およそ1週間、味わいを保つとされています。
ガス注入
ワインが劣化するのは、空気中の酸素によってワインが酸化するからです。
それであれば、ボトル内の酸素を他のガスに置き換えてしまえばいいというのが、
このガス注入法です。使い方は簡単で、「窒素ガス」や「アルゴンガス」などの不活性ガスをボトルに注入し栓をするだけ。栓自体は密閉性があれば構いませんので、先程紹介したコルクやスクリューキャップで結構です。
ボトル内の酸素が一気に不活性ガスと入れ替わるため、保管期間は長く10日程度はほぼ味の変化がなくワインを楽しめます。
小さなボトルに詰め替える
これまで紹介したのは、ボトル内の空気をどうするかという考えに基づいた方法でしたが、この方法はボトル内の空間自体をなくしてしまおうというものです。
やり方は、残ったワインがちょうど入る大きさのボトルに移し替えるだけ。
元のボトルよりも小さなものに詰め替えることで、ボトル内の空気を少なくでき、ワインと空気が触れている面積も減らせます。お家にあるほど良いボトルを見つけて、試してみてください。
冷蔵庫に入れる
これまで紹介したやり方で酸素の影響を少なくしたワインは、冷蔵庫に入れて保存してください。
白ワインなら特に問題はないでしょうが、赤ワインだと冷蔵庫にしまうことに抵抗を感じるかもしれません。
しかし、すでに説明したように、ワインは温度が上がり化学的に活性化すると劣化の速度も早まります。
特に、開栓して酸素に多く触れてしまったワインでは、未開栓のものよりも温度が酸化の早さに影響しますので、できるだけ温度を低くするほうがワインを傷めずに済みます。
飲む少し前に常温下に置いて、温度が上がってから飲めばおいしく飲めるはずです。
ただし、このときはボトルごと出しておかず、グラスに注ぎ終わったらすぐに冷蔵庫に戻すようにしましょう。なぜなら、ボトルごと出しておくと外気に触れている部分から温度が上がってしまい、ワイン内で対流が起きるからです。すると酸化しやすくなりますので、飲む分以外は温度変化が起きないようにさせましょう。
また、開封したワインはボトルを立てて保管するのが一般的です。というのも、寝かせた状態ではワインと空気が触れる面積が大きくなり、酸化しやすくなるからです。
まとめ
ワインの保管方法を選択するとき考えなければならないのが、温度、光、振動、匂い、そして振動でした。これらの条件が程よく整っているのがワインセラーであり、未開栓のワインを熟成を目的として長期保存したいのであればワインセラーが必要です。
しかし、必ずしもワインセラーが使えるわけではありません。そこで短期間に限って許容できる、ワインの保管方法をお伝えしました。
また、開栓後のワインに関しても、当日中に飲んでしまわなければならないということはなくしばらくはおいしく飲めることをお伝えし、適切な保管方法も解説しました。 デリケートなお酒であるワインは保管するのにちょっとした知識と工夫が必要です。本記事の内容を参考にして、ワインを長くおいしく楽しんでください。
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