赤ワインの澱(オリ)とは何?瓶底の沈殿物についてまるっと解説
赤ワインでも飲もうかとボトルを見てみると、底に沈殿物が!
あなたにも、こんな経験があるのではないでしょうか。そして、この沈殿物が澱(オリ)と呼ばれているのもご存じでしょう。
では、この澱が何なのか、どんな成分なのかご存じですか? 本記事ではこの赤ワインの瓶底でゆらめく謎の沈殿物、澱について詳しく解説いたします。もちろん、成分だけでなく、澱のある赤ワインの扱い方もお伝えします。ぜひ最後まで読んでいってくださいね。
赤ワインでよく見かける沈殿物の澱について
この記事を読まれているあなたなら、赤ワインと澱が切っても切れない関係なのはご存知でしょう。その一方、澱の正体がはっきりせず心に引っかかってもいたのではないでしょうか。
まずは、澱そのものに焦点を当ててお話しします。
澱とは赤ワイン中の成分が固形化したもの
澱とは、広くは液体の底に沈殿しているカスを意味します。ですから、ワインの製造過程でも出るものなのですが、ここでは瓶詰めした後に発生するものに限ってお話をします。
この澱は、赤ワインの保存期間中に、溶け込んでいた渋味成分であるタンニンや色素成分であるポリフェノールなどが結合し、固形化したものです。したがって、作られて間もない若いワインにはほぼ見られません。熟成を重ねるにつれて、瓶内で徐々に成分の結晶化が進んでいきます。
また、状態も様々です。結晶化したものがさらにつながって、塊のようになっているものもあれば、細かい粒子がモヤのように漂っているものもあります。これらを特に区別することはなく、どのような状態であってもすべて澱と呼んでいます。
澱が発生しやすい赤ワインの条件
澱が発生しやすい赤ワインとは以下のようなものです。
・フルボディの赤ワイン
・長期熟成されている赤ワイン
・濾過や清澄が軽度な赤ワイン
フルボディの赤ワイン
澱の素となっているのは、渋味成分のタンニンや色素成分のポリフェノールなどであるとお伝えしましたが、タンニンやポリフェノールは赤ワインの渋みや色の濃さに関係する成分です。つまり、渋みが多くて色も濃いワイン、すなわちしっかり造られたフルボディのワインほど澱が発生しやすいということです。
長期熟成されている赤ワイン
澱は時間と共にタンニンやポリフェノールなどが結合し、少しずつ増えていきます。そして、赤ワイン中に含まれる澱の素材となる成分がなくなるまで続きます。つまり、熟成期間が長くなるほど多く発生するということです。
濾過や清澄が軽度な赤ワイン
濾過や清澄という、にごりを除去する作業の程度が軽い赤ワインも澱が発生しやすいといえるでしょう。というのも濾過や清澄が軽度であれば、澱を作り出す成分がワイン中に多く含まれた状態であり、これらが結合しやすいからです。その点から、濾過や清澄をあまりしないものが多い「自然派ワイン」は澱が出やすいといえるでしょう。
赤ワインのおいしさと澱の関係
澱ができやすい赤ワインの条件をお話ししましたが、渋みがしっかりしたフルボディとなると、やはり上質な赤ワインということになりそうです。
また、長期熟成された赤ワインも、熟成自体が味わいを深めるだけでなく、その熟成に耐えられるだけの品質をワインがもともと持っていたともいえるでしょう。
ですから、澱の多い赤ワインとはおいしいワインであると、ある程度は関連づけられるのではないでしょうか。もちろん、澱のある赤ワインがすべておいしいということにはならないので、参考までに留めておいてください。
白ワインで多く見かけるのは酒石
あなたは、白ワインのボトルにも沈殿物があるのを見たことがあるでしょうか。
液体の底に沈んでいるカスという点では、白ワインの瓶底にあるこの沈殿物も澱といえます。
しかし、この場合は赤ワインの澱とは少し異なっており、タンニンやポリフェノールの固形化したものではなく、ワイン中の酒石酸とミネラル成分が結晶化したものであり、「酒石」と呼んで澱とは区別するのが一般的です。
ただしこの酒石も、酸やミネラル成分を多く含んだ上質な白ワインにできやすいということで、赤ワインの澱と同様にワイン愛好家から歓迎されています。
澱のある赤ワインって飲んで大丈夫?
赤ワインの澱を見ていると、このワインを飲んで大丈夫なのだろうか、と若干不安になりますよね。
その不安を解消しておきましょう。
澱があってもワインは健全
すでに述べましたが、澱となっているのはタンニンやポリフェノールといったもともとワインに含まれている成分です。これらが結合しただけなので、ワイン自体はまったく健全な状態であり、飲んでも大丈夫です。
むしろ、これらの成分が結合したことで、ワインの味は渋味などの刺激成分が減ってまろやかになっていますし、熟成による変化で味に複雑さが出てきています。
ですから、作られて間もない頃と比べて、口当たりが滑らかでありながら、香りや味に様々な表情を感じるようになっているはずです。
澱自体も無害
澱自体も、口にしたところで私たちの健康に害はありません。
ただし、澱が口に入るとザラザラとした感触があり、舌に強い渋みや酸味を感じます。これでは、ワイン本来の味を邪魔してしまいおいしさが減ってしまいます。
ですから、せっかくのおいしい赤ワインを楽しむのであれば、口に入らないようにするほうがよいでしょう。
澱がある赤ワインをおいしく飲む方法
澱が口に入らないようにするのであれば、まずはグラスに入れないようにするのが鉄則です。
ここでは、赤ワインの澱をグラスに入れないようにする方法をお伝えします
澱を1箇所に沈める
ボトルを移動させた後は、ワイン中の澱が舞ってしまっています。すると、グラスにも澱が入りやすくなりますので、まずはこの舞っている澱を瓶の底に沈めるようにしましょう。
そのためには、澱の状態にもよるのですが、飲む日の数日前からボトルを立てて置いておくことです。できれば、1週間以上前に立てておくことをおすすめします。そうすれば、ほとんどの澱は底に沈むでしょう。
そこから、ラベルを上にして静かに横に寝かせてください。こうすることで、瓶底にまんべんなく広がっていた澱が1箇所に集まりますので、注ぐ時に澱が舞いにくくなります。
もちろん、これ以降もボトルを動かさないように気をつけてください。
澱を舞わせない
ボトルを動かすことが、澱を舞わせる最大の原因です。ですから、ボトルに無駄な動きをさせないようにしてください。
澱には結晶が大きなものから、ほぼ結晶化しておらずゆらゆらと陽炎のようなものまでさまざまな状態があります。
特に結晶化していないものに関しては、わずかにボトルを動かすだけで舞ってしまうことがありますので、栓を開けるときやグラスに注ぐときなど、優しくボトルを扱い激しく動かさないように注意しましょう。
上澄みだけを注ぐ
勢いよく注ぐと瓶内でワインの対流が起こってしまい、澱が舞ってグラスに入ってしまいます。ですから、ゆっくりとボトルを傾けて、上澄みだけを注ぐようにしてください。
また、ボトル内のワインをすべて注ぐと澱もグラスに入ってしまいますので、底のあたりにあるワインは残すようにしましょう。残すワインの量は、澱の量や状態などで変わってきますので、目で見て確認し決めてください。
注ぎ方は、ボトルの底を掌で包むように持ち、澱がある部分を中心にし、この部分をあまり動かさないようにビンを傾けるようにするのがよいでしょう。
デキャンタージュをする
以上、グラスに澱を入れないようにワインを注ぐ方法をお伝えしましたが、毎回澱を気にしながら注ぐのは大変です。特に、澱が細かな粒子状で少しボトルを動かすだけで舞ってしまうような場合には、努力の甲斐なくワインが澱だらけになることも珍しくありません。
そんなときには、最初にデキャンタージュをしておくとよいでしょう。
デキャンタージュとは、ワインをデキャンタなどの別の容器に移し替える作業です。こうするとワインを注ぐ動作が一度だけで済みますので、澱が舞いにくくより多くの上澄みを得ることができます。
また、一杯ずつ澱を気にしながら注ぐ必要もなくなりますので、後の手間もなくなります。他の容器に移すのが一見面倒そうですが、結果的にはこのほうが楽だったということになるでしょう。
専用のデキャンタがなければ代わりのものでもよいので、澱が舞いやすそうなワインは、はじめにデキャンタージュすることをおすすめします。
ちなみに、デキャンタージュをする際にはワインボトルの下からライトを照らして、澱を見やすくすると失敗しづらくなります。
一部の赤ワインはデキャンタージュをしない
ただし、澱があってもデキャンタージュをおすすめできない赤ワインがあることも知っておいてください。
それは、長期熟成を経て酒質が繊細になっているものです。
まず知っておいていただきたいのは、ワインは熟成することにより酒質がデリケートになっていきます。渋みや色素の成分が結合して澱になり、味わいは滑らかかつ複雑になることはお伝えしましたが、同時にボディが華奢になっていくのです。
このようなワインをデキャンタージュすれば、ワインを空気と多く触れさせてしまうことにもなります。たしかに、澱を分離させることはできるでしょうが、空気と触れることでワインの酸化が一気に進んでしまい、味のバランスを崩してしまうことがあるのです。
ですから、長期熟成したワインの場合は、デキャンタージュする前にワインの味の線が細くなり過ぎていないか確認してからにしてください。飲んでみて、味にはかなさを感じるようでしたら、一杯ずつグラスに注ぐほうがよいでしょう。
まとめ
赤ワイン中の成分が固形化した澱。
上質なもの、熟成を重ねたものほど発生しやすいということでした。澱もワインも無害ですが、澱はグラスに入れないようにするのが基本です。たしかに、澱がないワインと比べると扱いが多少面倒ではありますが、おいしいワインを飲めるのだと思えば、澱を取り除く作業もうれしく感じるのではないでしょうか。
本記事で澱のある赤ワインの扱い方を覚えていただけたのなら、もう不安はないはずです。 澱がある赤ワインも、おいしく楽しく飲んでいただけることを願っています。
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