土着品種はイタリアの宝!国際品種のワインにはないきらめく個性の集合

ワイン用葡萄

ワイン好きのあなたなら「土着品種」という言葉を耳にしたことがあるでしょう。

しかし、土着品種に対して、珍しいというイメージをお持ちではないですか?

実は、イタリアでは土着品種が多く栽培され、土着品種から作られるワインもたくさんあります。

今回は土着品種の宝庫といわれるイタリアに注目して、土着品種とはどのようなものなのか。なぜイタリアは土着品種の栽培が盛んなのか。また、おすすめの土着品種などについてお話を進めてまいります。

この記事を読んで、現在のワイン界ではマイナーな感がある土着品種の魅力を再確認していただければ何よりです。

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目次

土着品種とは

イタリアのワイナリー

土着品種とは、古くからその地域で栽培を続けられ、固有の遺伝子の型を持っているブドウ品種のことです。他にも「地ブドウ」や「固有品種」「地場品種」などとも呼ばれ、英語では「local variety」といわれます。ほとんどが限られた土地のみで栽培され、その土地以外では名前も知られていないものばかりです。

対して、世界中の多くの生産地で栽培されているブドウ品種を国際品種と呼びます。

まずは、これらの特徴について見ていきましょう。個性的なワインを生み出す土着品種

昔は世界中で作られているブドウ品種などなく、すべてが土着品種と呼べる状況でした。つまり、各地域ごとで栽培される品種が違っていたということです。

それが、このあと紹介する国際品種が多くの生産地で栽培されるようになり、ワイン生産の主流となっていきました。その結果、知名度があり高値で売れる国際品種への植え替えが世界中で進み、多くのワイン産地で土着品種が廃れていってしまったのです。

では、土着品種の特徴とはなんでしょうか?

それは、国際品種にはない味わいを持っていることです。ワインの味わいにブドウ品種は大きな影響を与えますので、品種が違えばワインも独特の個性を持つようになります。

土着品種ごとに国際品種にはない個性があり、最大の特徴となっています。土着品種と対極にある国際品種

国際品種とは多くの国で栽培され、名前もよく知られた品種です。

白ブドウでは、「シャルドネ」や「ソーヴィニヨン・ブラン」「リースリング」など。黒ブドウでは、「カベルネ・ソーヴィニヨン」や「メルロー」「ピノ・ノワール」などが代表的です。

近代になってからワイン造りが始まった「新世界」と呼ばれる国では、大半が国際品種で作られるワインとなっています。

なぜイタリアワインには土着品種が多いのか?

葡萄畑

現在、国際品種から作られるワインが世界の主流となっている中で、イタリアワインに土着品種が多く使われている状況は特殊といえます。イタリアでは今なお多くの土着品種が栽培されており、イタリア政府公認のものだけで約500種といわれています。非公認のものまで加えると2000種を超えているとか。確かに、イタリアでも国際品種で作られるワインが増えているのですが、それでも土着品種が占める割合は高いままです。

では、なぜイタリアワインには、これほどまでに土着品種が使用されるのでしょうか。

地理的特徴

地中海に南北に長く突き出ていて、温暖な気候で日照量も多いイタリア半島は、全国的にブドウ栽培の適地となっています。そのため、イタリアにある20州のすべてでワイン生産が行なわれていますが、北のアルプス山脈や半島の中央のアペニン山脈、三方を囲む地中海の影響で、気候条件は各地で細かく異なっています。その結果、各生産地の特徴的な栽培条件に合った土着品種が残っていったのです。

文化的特徴

今では一つの国となっているイタリアですが、統一された国家となったのは1861年と遅く、それまで人々は独自の文化の中で異なる生活習慣を持っていました。そのため、住民は地元の食文化への愛情が深く、世界中が国際品種に関心を寄せる中で、土着品種を栽培し続けていたのです。

土着品種のススメ

ワイングラス

ここまでで、土着品種から作られるイタリアワインに興味を持っていただけたことと思います。そこで早速、イタリアワインを飲んでいただきたいのですが、どこから手を出していいのかと迷われるかも知れません。ですから、おすすめの土着品種と土着品種をより楽しむ方法をお伝えしておきます。

おすすめの土着品種

イタリアには白ブドウ、黒ブドウともに数多くの土着品種が存在しています。その中から、特に魅力的なワインを作っている2つの州の土着品種と、イタリアの土着品種の中ではメジャーであり、多くのワインショップで見かけるものに絞っておすすめさせていただきます。

カンパーニャ州の土着品種

イタリア第3の都市ナポリを州都とし、イタリア南部にあるカンパーニャは古代ローマ時代からワイン作りが盛んだった土地です。この土地を代表する白ブドウ、黒ブドウを紹介します。

白ブドウ

・フィアーノ

カンパーニャ州やこの後に紹介するシチリア州で多く栽培される土着品種の白ブドウです。古代ローマ時代から栽培されていたともいわれ、南イタリアで最古の土着品種の一つとされています。2003年にDOCGに昇格した辛口白ワイン「フィアーノ・ディ・アヴェッリーノ」で使用されます。

フィアーノは採算性が低いとして一時期栽培量が少なくなっていましたが、最近になり地元の生産者が栽培に力を入れるようになりました。

トロピカルフルーツや蜂蜜のような華やかな香りが特徴で、熟成にも耐えられるしっかりしたボディの白ワインに仕上がります。

・ファランギーナ

ナポリ周辺で栽培されることが多い白ブドウで、約3000年前にはギリシャからカンパーニャに伝わっていたといわれる土着品種の一つです。

フィアーノ同様にトロピカルで南国を思わせる香りの中に、やや緑を感じさせます。ミネラル感とシャープな酸が豊富で、しっかりしていながらキレのある白ワインとなります。

黒ブドウ

・アリアニコ

晩熟タイプのブドウで、日照時間が長く乾燥した土地を好みます。

果皮が厚いため、色の濃さと力強さ、濃醇さを持つ赤ワインが作られます。チェリーのようなチャーミングな香りと豊富なタンニンとのギャップが特徴です。

カンパーニャのワイン「タウラージ」で用いられます。

シチリア州の土着品種

イタリア半島の先にある地中海最大のシチリア島と周辺の島々を含むのがシチリア州です。エトナ火山が有名で、その山麓で作られるワインが近年注目されていますが、白ブドウから作られる酒精強化ワインの「マルサラ」でも知られています。

白ブドウ

・グリッロ

シチリア島を主産地とする土着品種の白ブドウです。

マルサラの原料として用いられることで知られていますが、現在ではグリッロ単一で作られる白ワインも多くあります。

糖度が高いために、アルコール度数が高いワインになることが多いです。

甘く華やかな熱帯の果実を思わせるアロマに、レモンやオレンジのような柑橘系フルーツの香りが混じり、多くが爽やかな白ワインとなります。

黒ブドウ

・ネロ・ダヴォラ

シチリアを代表する土着品種であり、かつては大量生産のリーズナブルなワインの原料として用いられていましたが、近年では高品質なワインも多く作られるようになっています。シチリア唯一のDOCGワインの「チェラスオーロ・ディ・ヴィットリア」の原料ともなっています。

凝縮感ある濃い色調をしており、黒い果実を思わせる力強さを持っています。まろやかなタンニンを豊富に含み、とても飲みごたえを感じさせるワインです。

他の州の人気土着品種

おすすめしたい土着品種は他にも多くありますが、ここではイタリアの土着品種の中でも特に知名度が高く、多くのワインショップで見かけるものをご紹介します。

白ブドウ

・トレッビアーノ

もはや土着品種とは呼べないほど広範囲で栽培されている白ブドウです。

何世紀もかけてイタリア国内で栽培地域を広げ、さらにはフランスにまで広がり「ユニ・ブラン」と呼ばれて、白ワインだけでなく「コニャック」の原料にもなっています。

ややハーブを感じさせる香りがあり、フルーティーでフレッシュ感あふれるワインとなります。

カジュアルなワイン作りに向いていて、イタリアで作られる白ワインの3分の1に使われているともいわれます。

・ガルガネーガ

栽培量はそこまで多くはないのですが、有名な白ワイン「ソアヴェ」の原料となるため知名度が高い白ブドウで、ソアヴェの産地であるヴェネト州が中心産地です。

果皮が厚く、豊富な果実味を持ちます。緑を感じさせる爽やかな香りと果実味、ミネラル感のバランスがよい品種です。

黒ブドウ

・サンジョヴェーゼ

イタリアを代表する赤ワイン「キアンティ」に使用されることでも有名な品種で、白ブドウ・黒ブドウを問わず、イタリアで最も栽培されています。

現在では「スーパータスカン」と呼ばれる新世代の偉大なワインにも多く用いられることでも知られています。

酸味とタンニンを豊富に持ちながらも、香りが穏やかな点がこの品種が広く好まれる理由かもしれません。

・プリミティーヴォ

イタリア国内では、主にプーリア州やサルディニア州で栽培される土着品種です。

もとはクロアチアから伝わったと言われていますが、DNA検査により、アメリカで広く栽培されているジンファンデルと同じ品種であることも判明しています。

早熟で糖度も高くなり、力強い赤ワインとなることが多く、ベリー系の果実を感じさせる香りとボリューム感ある果実味、しっかりした酸味のバランスがとれた味わいが特徴です。

土着品種の楽しみ方

その土地で長く栽培されてきた土着品種から作られるワインは、同じ土地の郷土料理との相性も自然と良くなっていきました。特にイタリア人は、ワインと料理との相性を重視するといわれますので、どの地域でもその土地のワインと料理は最高の組み合わせとされています。

ここでは、先に挙げたカンパーニャとシチリアの郷土料理をご紹介します。

カンパーニャ州のおすすめ料理

カンパーニャ州は、私たちがイメージするイタリアに最も近いといわれます。ピザやパスタの種類が豊富なこの地ですが、ここでは、これら以外で白ワイン、赤ワインに合う料理を挙げてみましょう。

白ワイン

・カプレーゼ

誰もが知るイタリア料理の代表。真っ赤なトマト、純白のモッツァレラチーズ、爽やかな緑色のバジルはイタリア国旗の色とも重なります。カンパーニャの白ワインを飲むときには、ぜひとも合わせたい一皿です。

赤ワイン

・ナポリ風ブラチョーラ

ブラチョーラとは、薄切りの肉で具を巻いてトマトソースで煮込んだもの。家庭料理であり、使う肉や具材などは各家庭で異なっていますが、多く使われるのはレーズンやにんにく、松の実など。お肉の旨味とトマトの酸味がカンパーニャの赤ワインとピッタリです。

シチリア州のおすすめ料理

地中海に浮かぶシチリア島は古代から様々な文明の交わるところでもありました。そのため、食文化もイタリア内では独特。ここでも、白ワイン、赤ワインに合う料理をご紹介します。

白ワイン

・カポナータ

イタリア料理の代表ですが、元はシチリアの郷土料理です。シチリア島で栽培の盛んなナスやトマトをはじめ、いろいろな野菜を煮込んで作っています。野菜同様に太陽をたくさん浴びて育ったシチリアの土着品種から生まれた白ワインとの相性は格別です。

赤ワイン

・ファルソマグロ

ファルソマグロは、先ほどのブラチョーラと似ていて薄切りの牛肉で具材を巻いた料理。しかし、こちらは中にひき肉やゆで卵、チーズが入っていてさらに食べごたえがあります。シチリアで作られる果実味たっぷりの赤ワインが引き立ちますので、ぜひ合わせていただきたい料理です。

まとめ

イタリアワインには、聞いたことがないブドウ品種が多いなとお思いだったかもしれませんが、それが土着品種というものであり、国際品種とはまた別の魅力を持っていることがおわかりいただけたのではないでしょうか。

イタリアの地理と文化が、土着品種を今に多く残す理由となっていたのですが、数多くあるイタリアの土着品種の中から、おすすめの品種をご紹介し、郷土料理と合わせていただく楽しみ方もお伝えしました。

これまでは、聞き馴染みがあるブドウ品種ばかりを選ばれていたかもしれませんが、これからはぜひ土着品種で作られたイタリアワインも飲んでみてください。 きっと、ワインの新たな世界を感じていただけるはずです。

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