赤ワインでよく聞く“フルボディ”とは?5分でわかるワインの“ボディ”について
「フルボディの赤ワインで何かおすすめは?」
こんなセリフを高級レストランや洒落たワインバーで言ってみたいものです。
でもここで「フルボディって言葉はよく聞くし使いもするけど、どういうことなんだろう?」となりませんか?
もしそうなら、赤ワインでよく使われるフルボディという言葉について一緒に見てまいりましょう。
フルボディの赤ワインの楽しみ方や誤解されがちなことについても解説します。 疑問を一気に解決していきますので、最後までお読みください。
赤ワインのフルボディとはどういうもの?
フルボディというのは「フル」と「ボディ」の2つの言葉からできていますので、それぞれについて知る必要があります。 ここでは、「ボディ」について、何をもって「フル」になるのか「フル」以外に何があるのかについて確認していきましょう。
フルボディの「ボディ」とは?
「ボディ」とは、あの「身体」のことですが、ワインの「身体」とは何を指しているのでしょうか。はじめにこの「ボディ」についてお話します。
「ボディ」の意味は?
私たち人間の身体に体格や体型の違いがあるように、ワインにもこの体格に当たるものがあります。つまり、がっしりしているとか華奢だとか、ワインの味わいを体格に見立てているのです。身長や体重や胸囲などの要素で人間の体格が分けられるように、ワインもいくつかの要素をもってフルボディなどと分類されます。
ですから、ボディとは複数の観点での総合的な評価ということです。
・香りのふくよかさや複雑さ
・味わいの力強さや濃厚さ、渋みの多さ
・飲んだ後の余韻の長さ
などが代表的なポイントです。
これらの総合値が高いものをフルボディと呼んでいます。
また、一般的にボディはワインの見た目と対応しています。赤ワインであれば、赤みが濃くて黒色に近いものはほとんどがフルボディです。
ちなみに、フルボディを日本語で表現するときは、「重い」とか「濃い」「しっかりした」などの言葉が使われます。また「男性的」というのも、がっしりしたフルボディのワインに使われます。
「ボディ」はどのような基準で決まるの?
ボディがワインの味わいを指すのはわかったがどういう基準で決まるのか、と思われたでしょうか。
実は、ボディの基準ははっきり数値で決まっているわけではありません。ですから、人それぞれの感覚によって判断が分かれることがあります。
これは、ワインのラベルにフルボディなどと書かれているのも同様です。あくまでも製造元や販売元の判断であり個人差があることにご注意ください。
「ボディ」は赤ワインだけに使うの?
フルボディと言われる場合、ほとんどが赤ワインです。しかし、白ワインやロゼワインなどでもボディという言葉は使われます。
各ワインの種類の中で、相対的に力強く、濃厚な味わいであればフルボディとなりますので、赤ワイン以外でフルボディと表現されたとしても戸惑わないようにしてください。
赤ワインにおいてフルボディを決める要素は?
では、フルボディというとき、赤ワインのどういう要素が関係しているのでしょうか。具体的に述べてまいります。
フルボディとなる味の要素とは?
大きく関係するのは以下の4要素です。順に見てまいります。
アルコール度数
ワインを構成する要素のほとんどは水分ですが、次に多いのがアルコールで全体の十数%を占めます。
アルコールは飲むとコクやボリュームを感じさせますので、アルコール度数が高いワインはボディも豊かなワインということになります。
アルコール度数が高いからすべてフルボディとはならないのですが、ほとんどがフルボディといってよいでしょう。
渋み
渋みは、赤ワインに飲みごたえや複雑さを与え、ボディ感へつながります。
ブドウの種子や果皮、果梗などから抽出されるのですが、主に2つの条件が関係します。
《ブドウ品種》
ブドウは品種によって「タンニン」という渋み成分の量が違います。ですから、タンニンを多く含む品種から作られたワインは渋くなる傾向にあります。
タンニンを多く含む品種として有名なものは以下のとおりです。
・カベルネ・ソーヴィニヨン
・メルロー
・シラーズ
《醸造工程》
ブドウに含まれるタンニンも醸造の過程で抽出されなければ、ワインは渋くなりません。
ブドウが圧搾されて醸造が終わるまでの間の、種子や果皮などが果汁(ワイン)と触れている時間や温度によって渋さが決まります。
果実味(残糖)
果実味が凝縮されているほどしっかりとした味わい、つまりボディ感のあるワインになります。
ブドウの糖分が発酵しきれず残った場合にも、果実味として感じられます。
樽感
一部の赤ワインは、発酵が終わった後に樽で熟成されます。このときに樽からワインに移る成分もフルボディとなる要素です。
チョコレートやバニラなどを連想させる樽の香りは、赤ワインに複雑さを与えます。また、樽からは渋みや甘味成分も溶け出しますので、重厚感を増していきます。
フルボディになるブドウ品種があるの?
先述したように、フルボディの赤ワインの要素として品種があることは確かです。実際に、先ほど紹介した品種で作られている赤ワインのほとんどがフルボディと呼べるものです。
しかし、これらの品種で作ったワインが必ずしもフルボディであるとはかぎりません。ですから、ラベルに書いてある品種名だけでフルボディだと決めつけないようにしましょう。
赤ワインにはフルボディ以外何があるの?
赤ワインのボディタイプは大きく3つに分かれます。
フルボディ以外の2つのタイプについてお話します。
ライトボディ
赤ワインでも軽い味わいのものをライトボディと呼びます。
ただし、軽いといっても薄い味わいのワインということではありません。軽くとも、繊細で品を感じさせる味わい深いものもありますので、「ライトボディ=品質が低い」ものではないと思っておいてください。
ライトボディの赤ワインの代表といえば、誰もが知る「ボージョレ・ヌーヴォー」です。ガメイという品種で作られており、この品種で作られるワインの多くがライトボディです。
ミディアムボディ
フルボティとライトボディの中間がミディアムボディです。
しかし、単純に両者を足して2で割ったようなものばかりではなく、独特の魅力を持ったワインが多く存在しています。幅広い料理に合わせやすいというのもミディアムボディの特徴です。
ミディアムボディの赤ワインの代表は、銘醸ワインを多く産するフランス・ブルゴーニュのものでしょう。品種はピノ・ノワール。ミディアムボディが単なる中間的なものではないと述べましたが、このブルゴーニュ産の赤ワインはその典型です。華やかな香りと滑らかでありながらもコクを感じる飲み口で、多くのワイン愛好者を虜にしています。
フルボディの赤ワインの楽しみ方は?
では、ここではフルボディの赤ワインをよりおいしくするものについてご紹介します。
フルボディの赤ワインにはどういう食べ物を合わせるの?
やはり、ワインは食事と合わせるとよりおいしく感じます。赤ワインとの組み合わせでまっさきに浮かぶのが肉料理。この相性の良さは多くの人が認めるものです。そして、チーズ。こちらも、ワインとは切っても切れない関係です。
では、フルボディの赤ワインと組み合わせるのはどのような肉料理、どのようなチーズがよいのでしょうか。
フルボディの赤ワインに合う肉料理とは?
フルボディの赤ワインとの相性が良い肉料理を考えるとき、肉の種類とソースで分けて考えるほうがよいでしょう。ここでは2つの視点でお話します。
肉の種類
まずは、肉の種類ですが、身の色が赤いものをおすすめします。具体的にいうと牛や羊の肉などです。逆に、豚や鶏などはピンクや白色の肉なので、あまりフルボディ向きとはいえません。
ただし、サシが入っていてピンクに見える牛肉は別です。赤身の肉がフルボディに合うことはお話しましたが、肉の脂身もフルボディの赤ワインが持つ渋みや酸味などとの相性がよいので、サシが入った肉はフルボディ向きです。
ソース
ソースは濃厚なものがよいでしょう。
例えばデミグラスソースのような煮詰めたソースです。出汁の旨味が凝縮したソースは赤身の肉の味をさらにパワフルにして、フルボディの赤ワインの濃醇な味わいとのバランスを絶妙に保ちます。特に赤ワインをたっぷり使って煮詰めたソースは、肉とワインとのマリアージュを最高のものにしてくれるのでおすすめです。
ちなみに、スパイスのニュアンスが強めの赤ワインを選んだのならば、料理にも少し多めにスパイスを入れると味が馴染みますので、試してみてください。
フルボディの赤ワインに合うチーズとは?
チーズはいつでもワインを裏切らない善き友人です。
しかし、それもフルボディの赤ワインとなりますと、付き合いきれるチーズは限られてしまいます。相性の良いものを2種類ご紹介します。
ハードチーズ
パルミジャーノ・レッジャーノをはじめとするハードチーズはフルボディの赤ワインに向きます。それも、熟成期間が長いものがよいでしょう。
ハードチーズは、熟成期間中にどんどん味が凝縮され旨味が増していきます。この凝縮された旨味がフルボディの赤ワインの味わいをさらに深めます。このおいしさは、両者のマリアージュならではのものです。
重いワインほど、熟成期間が長いものを合わせるようにしてください。
ブルーチーズ
ロックフォールやゴルゴンゾーラといったブルーチーズも、フルボディの赤ワインとの相性が良いチーズです。
強烈な香りと刺すような味わい、刺激的な塩気と口に拡がる脂質、これらを受け止められるのがフルボディの赤ワインの力です。力と力のぶつかり合いのような組み合わせですが、口の中で起きる味の無風状態がこのマリアージュの醍醐味です。
フルボディの赤ワインをおいしく飲むには?
フルボディの赤ワインは、時として重すぎておいしく感じないことがあります。そんなワインも飲み方次第でおいしくなりますので、以下のことを試してみてください。
温度
おいしく感じる赤ワインの適温は、およそ12度~18度くらいとされています。
この中でも、フルボディは高めがよいとされ、およそ15度~18度くらいです。これは、温度が低いと渋みをより強く感じてしまうからです。
ですから、飲んでみて渋みを強く感じるようでしたら、温度を少し上げて飲むようにするとよいでしょう。
グラス
フルボディの赤ワインをおいしく飲むには、ボルドー形やチューリップ型といわれるワイングラスがあるとよいでしょう。
これは、ワインが入る部分の真ん中が膨らんでいて、口にかけて少しすぼまっている形のものです。できれば、大ぶりのものがよいのですが、フルボディの赤ワインを飲むためだけにグラスを揃えるのも大変でしょうから、他のワインにも使えそうな範囲で大きめのものを用意するとよいでしょう。
エアレーション
ワインと空気を触れさせることを、エアレーションといいます。
ワインは保存期間中に眠ったようになり、開けてすぐには本来のおいしさを発揮できないことがあります。そこで、ワインを目覚めさせるために行なわれるのがエアレーションです。
ワインを飲んでいる人がグラスをクルクル回しているのを見かけたことがあるかと思いますが、これもエアレーションの1つです。あとは、デキャンタという容器にワインを移し替えることでもエアレーションができます。
このエアレーションにはもう一つ効果があります。それが、赤ワインの渋さを和らげ、まろやかな味わいにすることです。
ですから、フルボディでやや飲みづらさを感じるようでしたら、エアレーションをしてみてください。
「良質な赤ワイン=フルボディ」なのか?
いつの頃からか、良質な赤ワインといえばフルボディであり、フルボディであることが良質な赤ワインの条件というイメージができてしまったように感じます。
本当にそうなのでしょうか?
赤ワインとフルボディの関係について考えてみましょう。
赤ワインでフルボディとは良質を意味する?
たしかに、フルボディの赤ワインを作るにはいくつかの条件が揃わなければなりません。また、この何十年か、評価が高く人気が出たワインの多くがかなりボリューミーな赤ワインだったこともあります。
それで、フルボディであることが品質の高さを表しているという印象ができ上がったのではないでしょうか。
しかし、フルボディであってもカジュアルなものもありますし、質を追求したワインだがフルボディでないものも多く存在しています。ですから、両者を単純にイコールで結びつけないほうがよいでしょう。
フルボディの赤ワインが好きというと通っぽい?
これもイメージとして、あるのではないでしょうか。
たしかに、ワイン初心者にとって渋みが強いフルボディの赤ワインは飲みづらく感じ、好まれない傾向にあります。そこから、「渋いワインが飲める=通」という図式になったのかもしれません。
しかし、あくまでも好みの問題であって、ワイン通と呼ばれる人でも渋いワインを得意としない人もいますし、初心者といわれる人でもフルボディ好きの人はいます。
フルボディの赤ワインは香り豊かで味わいも濃醇なので、すべて受け止めるのにある程度の経験は必要かもしれません。しかし、だからといってためらうことはありませんので、フルボディの赤ワインをどんどん楽しんでください。
まとめ
今回は、フルボディの赤ワインについて、多くの方が疑問に思われるであろうことにお答えしてまいりました。
そもそも「ボディ」とは何かということや、どういうワインがフルボディになるのか、またフルボディ以外に何があるのか。他にも、フルボディのワインをよりおいしく楽しむにはといったことや、フルボディとワインの質は関係するのかといったこともお伝えしました。 香り、味、余韻と多くの点で飲みごたえがあるフルボディの赤ワイン、これを機にもっとチャレンジしてみてください。
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